進学塾enaで私立中受験は現実的なのか!?を考察|難関私立中コース「極」も解説

今回は、進学塾enaでの私立中受験について、enaの実情の解説とそれを踏まえた考察をしたいと思います。
- 難関私立中受験は他塾が本命。後追いのenaに優位性は少ない。
- 「極」の存在は、ena通常校では都立中と難関私立中の対策を両立できないということを示している。
進学塾enaは「都私立のena」に変わりつつある
進学塾enaは近年「都立のena」というブランドイメージから「都私立のena」にイメージチェンジを図ろうとしています。
このイメージチェンジの経緯としては、都立中受験対策を進めてきたena本科の生徒が入試本番が近くなってくるにつれ、私立中も受けたいというニーズが出てくることが多く、その要望に対応する形にしたと説明しています。
また近年、私立中の入試の出題傾向が都立中高一貫校の適性検査に近づいてきており「都立のena」として培った適正検査対策ノウハウが活用できるからこそ、私立中も視野に入れることができるとも説明しています。
こういった背景のなか、ena通常校の授業カリキュラムも従来の「都立中対策」から「都私立中対策」に変更されてきています。
さらに、難関私立中受験に特化した「極」コースも存在しています。
難関私立中コース「極(きわみ)」
以降では進学塾enaにおける難関私立中コースである「極」を解説します。
「極」コースの特徴
「極」は御三家や筑附、筑駒、早慶などの難関私国立中を目指すための専門コースです。
その特徴は以下です。
- 1クラスの定員10名の少人数制で、一人ひとりの生徒とコミュニケーションをとりながら細かく指導
- enaの最優秀教師が授業だけでなく、授業前後の質問対応、宿題のケアも実施
つまり、難関私立中学を目指す受験生を手厚く指導する内容になっています。
「極」の学習スタイル
「極」コースでは、授業の前後に教師が常駐することで授業時間だけでなく、個別フォローを行う学習スタイルをとっています。
以下に小4時における個別フォロー含めたタイムスケジュールを記載します。
時間割 | 時間帯 | 内容 |
---|---|---|
「極」タイム | 16:00-16:30 | 教師への質問対応、個人学習 |
授業 | 16:30-19:20 | 通常の授業(単元解説、演習) |
授業後フォロー | 19:20-21:00 | 再テストや質問対応、宿題のフォロー |
授業以外の時間は任意参加となりますが、「極」コースに参加している権利みたいなものなので、基本的には、この「極」タイムと授業後フォローの時間を有効活用して学習を進める形になります。
学年別の指導の違い
「極」コースは、小1から入塾可能になっています。(入塾テストあり)
各学年での指導時間や使用教材は以下となります。
比較軸 | 小1~3 | 小4~5 | 小6 |
---|---|---|---|
授業回数 | 週2回 | 週3回 | 週4回+日曜特訓 |
1回あたりの授業時間 | 90~100分 | 110~210分 | 210分 |
メイン教材 | オリジナル教材 | 予習シリーズ | 予習シリーズ |
学年ごとの学習時間は通常校と概ね変わらない水準です。特徴的なのは小4からメイン教材が予習シリーズになることです。
「極」で難関私立を狙うのは現実的なのか?
以降では、この「極」コースで難関私立中を狙うことは現実的なのか?について考察していきたいと思います。
「極」校舎は渋谷と国立の2校、通える人は限られる
この「極」コース、開校している校舎が渋谷と国立の2校だけです。(25年6月現在)
小学校が終わった後16:00から「極」タイムが始まるため、そもそも近隣に住んでいないと間に合いません。つまり、渋谷もしくは国立に住んでいる家庭じゃないと通うことが成立しません。
難関私立中を狙うのだから「極」の近くに住むという高い意識(?)がないと「極」に通う資格を得ることはできないということです。
定番の予習シリーズを利用しているが後発
先述したとおり、「極」コースでは、小4からメイン教材が「予習シリーズ」となります。
当サイトをご覧になっている皆さんなら、ご存じかと思いますが「予習シリーズ」とは四谷大塚が出版している私立中受験対策の王道中の王道教材です。
この教材、本当に王道で大手塾・個人指導塾など、多数の塾で利用されています。大手塾の早稲田アカデミーも(四谷大塚とライバル関係にあるにもかかわらず)本教材を利用しているくらい私立中受験には必携の教材です。
「極」でも、他の大手塾が作っている教材を見栄も外聞もなく利用しているのだから、本気で私立中対策を考えている心意気は伝わります。
ただ、この「予習シリーズ」を利用した学習は、はるか昔から他塾が取り組んできており、enaは明らかに後発です。
昔から本教材を使っての授業を実施してきている塾の方が、授業の練度が高いと考えるのが自然です。他塾を差し置くほどの学習効果が得られるとは考えにくいというのが実情かと思います。
本気度はありそうだが優位性が少ない
以上をまとめると「極」コースは、難関私立中を受験するための学習カリキュラムを提供してくれる講座だと判断できる一方で、他塾と比較した際の優位性がほとんどない(校舎が限られている「極」を選択する理由がない)というのが現時点の判断です。
なお、唯一の優位性といえるのは、クラスが少人数での構成であるため、教師とのコミュニケーションがとりやすいというところです。教師と積極的にコミュニケーション取れる(取りたい)子は、他塾より学習がしやすい環境であると言えます。
まとめ:都立中と難関私立を両立できないということをena自身が示している
「都立のena」は「都私立のena」にイメージチェンジをしようとしています。
ただ、私立と言っても多岐に渡ります。enaが言う私立がどのあたりをターゲットにしているのかを正しく理解しておかないと、この先の志望校選択や、それに合わせた学習コース選択の判断を誤りかねません。
今回「極」コースの内容を確認した結果を踏まえた、現状のenaにおける都私立のターゲットは以下と判断しています。
enaにおける都私立中受験の組合せ | 第二志望 | |||
---|---|---|---|---|
都立中 | 難関私立中 | 標準私立中 | ||
第一志望 | 都立中 | ー | △(両立困難) | ○ |
難関私立中 | △(両立困難) | ×(極あるが他塾優位) | ×(同左) |
結論としては、通常校では「都立中を本命として、標準私立中を併願」の1択です。(「極」は難関私立中が本命です。一方、都立中対策が不十分になる側面があります)
つまり都立中受験対策を進めてきた通常校の生徒が、途中で難関私立中を第一志望に切り替えるということは難しいです。
難関私立中をターゲットにしている「極」と通常校の学習教材が異なることが、それを証明しています。
本当に途中で難関私立中を第一志望に切り替えるならば、「極」もしくは他塾に転塾するのが現実的プランだと思われます。
したがい、enaが言う私立は、都立中一貫校を本命としたときの併願校(本命よりも偏差値が低い、いわゆる滑り止めにあたる私立中)ということになります。
これまでのenaでは、この併願校が基本的には適性検査型試験を採用している学校だけしか選択肢にならなかったのですが、それを4科型試験を採用している学校にも少し間口を広げ対応できるようにした。というのが正しい表現だと思われます。
なお、enaは通常校からの難関私立中の合格実績も作りたいというビジネス上の思惑も間違いなくあるので、状況によっては通常校でも難関私立中を併願校として勧めてくることもありうるため、そのあたりは判断を誤らないように注意が必要です。
補足:ena通塾者で難関私立中を狙っている人は少ない
先日、ena通塾者だけが参加できる難関私立中の学校説明会に参加しましたが、参加者は20組程度でした。(都立中高一貫校の学校説明会は、100組以上来ていた)
つまり現時点、ena通塾者で難関私立中を狙っている人自体が少なく、難関私立中を第一志望で考えている人は他塾に通っているということを、このような側面からも感じました。
